2007年09月01日

国家賠償請求訴訟〜その1〜

普段から,もっとも経済的に追いつめられた貧困者に接しているので,当事者には,「自立のためにも生活保護を受けるべきである!」といい,福祉事務所に対して,「水際作戦はやめろ!」と言っています。

かといって,いつもうまく行くわけでもなく,なかなか保護の申請を受け付けなかったり,受け付けても却下されたり,保護が開始になったても廃止されることもあります。

もちろん,申請不受理などあれば,直ちに怒っとCOMするし,却下や廃止に合理的理由がないのであれば(ほとんどがありません。)審査請求などして争っていきます。

しかし,一時的であれ,生活保護でしか生きていけない当事者にとって,命の蛇口を握る福祉行政と対峙しなければならない場面では,どれ程の勇気が必要かは,おそらく私たちの想像を上回るものでしょう。

そんな訳で,私も少し勇気をだして,私たちの仕事の蛇口を握る裁判所と対峙することにしました。

以前に,少し報告をした東京地方裁判所破産部の運用についてです。

第1回の口頭弁論が9月7日10時30分から東京地裁627号法廷でありますので,興味がありましたら覗いてみてください。

※弁論開始の時間が1時30分と誤っていたので訂正しました。(070904)

以下に訴状を貼り付けますが,あまりも長いので折りたたみます。



訴    状
                       
平成19年7月26日

東京地方裁判所 御中


原    告    後  閑  一  博
  


原   告    後  閑  一  博
被   告        国
上記代表者法務大臣   長  勢  甚  遠


損害賠償請求事件
訴訟物の価格 金202,640円
ちょう用印紙額 金  3,000円

請求の趣旨
1.被告は,原告に対し,金202,640円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2.訴訟費用は被告の負担とする。
3.仮執行宣言

請求の原因
第1 当事者
1.原告は,東京都23区内に事務所を有する司法書士を業として営む者である。
2.東京地方裁判所(以下「東京地裁」という。)は,後記記載の原告の司法行政文書開示請求に対し,文書不存在の回答により,不開示の決定をした裁判所である。東京高等裁判所(以下「東京高裁」という。)は東京地裁の不開示の決定に対する原告の苦情を受け付け,再度,文書不存在の回答により,不開示の決定をした裁判所であり,裁判所法により司法行政に関して東京地裁を監督する裁判所でもある。最高裁判所(以下「最高裁」という。)は,東京高裁への苦情申出に対する回答に対する原告の苦情を受け付け,再度,文書不存在の回答により,不開示の決定をした裁判所であり,裁判所法により司法行政に関して東京地裁及び東京高裁を監督する裁判所でもある。これらの裁判所の行った不法行為に対する損害賠償の請求の訴訟であるので,被告は国である。

第2 本件訴訟の背景
1.東京地裁は,東京都23区内に住所又は居所を有する者の破産申立に関して専属管轄を持つ地方裁判所であり,同裁判所民事第20部(以下「民事20部」という。)は,東京地裁内で組織上破産事件を担当する部署となっている。
2.民事20部は,平成11年より,破産申立に代理人の選任されていることを要件として簡易な手続で破産手続を取り扱う,次の2種の事件類型を設けた。
 @ 破産管財人の費用を通常管財事件に比して著しく低くする事件(以下「少額管財事件」という。)
 A 破産財団の費用を支弁することができない程度に財産をもたない申立人の場合に破産手続を破産手続開始決定と同時に廃止する所謂同時廃止事件において,破産申立日の即日に破産手続開始決定を行う事件(以下「即日面接事件」という。)
  また,その運用の開始時期は定かではないが,同時廃止事件と管財人を選任する管財手続のいずれに事件を振り分けるかの基準を20万円以上の予納金を負担できるか否かに定めている。
  なお,上記2種の事件類型及び管財事件と同時廃止事件の振り分け基準は,破産法にその根拠とする条文はなく,民事20部の独自の「運用」である。
3.上記第2の2の運用開始により,民事20部の取り扱う破産事件に占める代理人を選任しない申立事件(以下「本人申立事件」という。)の割合は急激に低下し,平成17年には実に0.39%に至っている。なお,平成11年から平成17年までの破産新受件数に占める本人申立事件の割合は下記表記載のとおりである。(甲1号証)
平成11年   14.18%
平成12年    8.79%
平成13年    3.09%
平成14年    1.26%
平成15年    0.74%
平成16年 0.65%
平成17年 0.39%
4.また,同時に民事20部における全破産事件の新受件数に占める少額管財事件の割合は平成11年に4.45%であったものが平成17年には34.82%に至り,同時廃止事件に占める即日面接事件の割合は平成11年には42.36%であったものが平成17年には95.84%に至っており,両事件への集中が起きている。(甲1号証)
5.原告は,上記の状況が,民事20部において申立てられる破産事件の効率的処理にのみ重きを置き,裁判所にとって事件処理が容易な代理人を選任した申立事件(以下「代理人申立事件」という。)への強力な誘導が行われており,その反面,代理人の選任を望まない又は経済的理由からすることのできない多重債務者の破産申立が抑制される結果になっていることを危惧し,運用の決定・維持に関する司法行政作用について検証を行うべく,最高裁判所の規定に基づき司法行政文書の開示を求めた。
6.本件訴訟はこの司法行政文書の開示に対して,開示を求めた全ての文書が存在しないとして,東京地裁,東京高裁,最高裁がいずれも「虚偽」の回答をしたために,原告に生じた損害の賠償を求める訴訟である。

第3 司法行政文書の開示請求の経緯
1.最高裁は,平成17年12月12日付最高裁秘書第003688号の文書番号の「最高裁判所司法行政文書取扱要領について(依命通達)」,同日付最高裁秘書第003689号の文書番号の「下級裁判所司法行政文書取扱要領について(依命通達)」で裁判所における司法行政文書の取扱について通達を発している。
 最高裁は,平成13年3月29日付最高裁総一第82号の文書番号で「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の基本的取扱いについて(依命通達)」を,平成13年9月14日付最高裁総一第254号の文書番号で「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の基本的取扱いの実施の細目について(依命通達)」で下級裁判所における司法行政文書の開示に関する事務の取扱について通達を発している。
 なお,最高裁の保有する司法行政文書の開示についても「最高裁判所の保有する司法行政文書の開示等に関する事務の取扱要綱」を規定している。
 そして,以上の「最高裁判所司法行政文書取扱要領について(依命通達)」,「下級裁判所司法行政文書取扱要領について(依命通達)」(以下「文書取扱に関する依命通達」という。),「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の基本的取扱いについて(依命通達)」(以下「開示に関する依命通達」という。),「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の基本的取扱いについて(依命通達)」,「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の基本的取扱いの実施の細目について(依命通達)」,「最高裁判所の保有する司法行政文書の開示等に関する事務の取扱要綱」はいずれも最高裁のホームページに掲載され,広く国民に周知される取扱となっている。
2.ここで,文書取扱に関する依命通達第4の1に規定する文書作成の原則では,「裁判所の意思決定に当たっては,司法行政文書を作成して行うことを原則とする。」と規定しその例外として「処理に係る事案が軽微なものであるときは,司法行政文書を作成することを要しない。」としている。
 次に,開示に関する依命通達の2に規定する開示の原則では,「裁判所はその保有する司法行政文書の開示を求められた場合は,何人に対しても,当該司法行政文書を開示するものとする。」と規定し,例外として「法令に別段の定めがあるとき」及び「情報公開法第5条に定める不開示情報に相当する」ときとしている。
 したがって,裁判所の意思決定には,原則として司法行政文書が作成され,開示請求があった場合にはその司法行政文書が開示されることになり,その旨の意思表示を下級裁判所の司法行政に関し監督権を有する最高裁が示しているのである。
3.原告は,東京地裁に対し,開示に関する依命通達に基づき,次の@乃至Hの文書の開示を平成18年9月1日に東京地裁総務課に開示請求書を提出することで求めた。(甲2号証)
@ 民事20部における本人申立にかかる自己破産手続きに対する,助言を定めた書面及び取扱基準に関する書面(平成16年度の本人申立の割合が0.65%と他の地方裁判所と比して著しく低く推移する理由がわかる書面)
A 民事20部に対し,自己破産手続きについて相談に訪れた人数がわかる書面
B 民事20部の相談者に対する,助言を定めた書面及び取扱基準に関する書面
C 司法書士作成にかかる申立書が提出された場合における本人への助言を定めた書面や取扱基準に関する書面
D 東京司法書士会による平成17年2月1日付「要望書」への対応を協議した会議録等
E 即日面接,少額管財を代理人に限るという方針を決定した協議に関する文書
F 平成15年から17年における個人破産事件の普通裁判籍が他の裁判所に属する事件数のわかる書面
G 管轄違背事件への対応を協議した会議録等
H 民事20部と在京3弁護士会若しくは日本弁護士連合会,並びに法律扶助協会との間で同部が取り扱う破産事件の協力関係を協議した文書(東京地方裁判所の判事補鈴木義和氏の民事法情報“2004年11月10日,218号”寄稿文書によれば,“民事20部が在京三弁護士会との協議に基づき先行的に実施してきた運用”であり“今後も絶えず関係者と協議を続け”とあり,その協議録等)
4.上記の東京地裁に対する開示請求に対しては,平成18年9月21日東京地裁総務の担当者より,開示文書の特定ができた旨及び要約がよいのか原文が良いのかの問いが架電により原告に告げられた。
5.しかし,上記の問いにもかかわらず,平成18年10月4日付「司法行政文書不開示通知書」で不開示の理由を「当該文書は存在しない。」として開示を行わない決定を東京地裁は行った。なお,この不開示決定は開示に関する依命通達8に規定される不開示の場合には書面で,開示しない理由を付記して開示の申出から原則として30日以内に行うとする規定にも反している。(甲3号証の1)
6.この東京地裁の不開示の決定に対して,原告は不開示決定の理由付記が不明確であること,開示を請求した文書が全て不存在ということは考えられないことの2点を理由として,開示に関する依命通達の11に基づき不開示決定に対する苦情申出を平成18年11月1日東京高裁総務課に提出することにより行った。(甲4号証)
7.この東京高裁に対する苦情申出に対し,東京高裁は平成18年11月30日付「苦情の申出に係る司法行政文書不開示通知書」で突然,「裁判事務に関する文書」は開示対象でない旨を前後の関連なく主張し,「司法行政文書を精査した結果」文書が存在しないことを理由に東京地裁の不開示の決定を相当とした。(甲5号証)
8.この東京高裁の決定に対して,原告は,司法行政文書とは別の裁判実務に関する文書という類型を持ち出すことで,不開示を正当化することはできないこと,存在が確かであるにもかかわらず不存在と回答した理由に対する苦情であるのにこれに対する回答がないこと,開示を請求した文書が全て不存在ということは考えられないことの3点を理由として,開示に関する依命通達の11に基づき平成19年1月24日に,東京高裁及び最高裁に対して「司法行政文書の開示に関する苦情の申出書」をそれぞれ郵送し,苦情申出を行った。(甲6号証,甲7号証)
9.この東京高裁及び最高裁に対する苦情申出に関して,平成19年2月5日最高裁に統一を行いたい旨の申出が最高裁よりあり,原告もこれに応じた。その後,開示に関する依命通達11に規定される30日以内に回答する原則に反し,平成19年3月26日に不開示の決定を行った。(甲8号証)
10.原告は東京地裁へ司法行政文書開示請求書を提出することに金460円の交通費を要した。原告は東京高裁に苦情申出をするにあたり,金460円の交通費を要した。原告は,東京高裁及び最高裁に苦情申出書を郵送するにあたり,郵送費金1,720円を要した。

第4 不開示文書の存在
1.ここで,東京地裁,東京高裁及び最高裁が不存在と主張する開示請求文書@乃至Hの存在について以下検討する。
 (1)開示請求文書@,B及びCに関して
ア 東京地裁よりの不開示決定と共に,平成18年10月4日付東京地方裁判所事務局総務課長渡辺雅伸名義で作成された「事務連絡」が送付されたが,この中で,原告に対し開示要求文書Aを不存在としながらも,裁判所の窓口に破産手続について相談に訪れた方の人数の推計が通知されている。この「事務連絡」中の数値と実際の申立数の値には大きな隔たりがある。(甲3号証の2)
イ すなわち,事務連絡によれば,平成17年に民事20部に相談に訪れた人数は約830名であると推計されているのに対し,平成17年の本人申立数はわずか97名である。
ウ 東京地裁判事及び判事補が各法律関係雑誌で発言するところによれば(@民事法情報242号東京地方裁判所民事第20部判事補松井洋氏寄稿文章「在京三弁護士会によるクレジット・サラ金法律相談センターをはじめとするバックアップ体制が完備し,有効に機能している」,A民事法情報218号東京地方裁判所判事補鈴木義和氏寄稿文書「在京三弁護士会が合同で設置したクレジット・サラ金法律相談センターが有効に機能していることが影響」,B金融法務事情1755号東京地方裁判所民事第20部判事中山孝雄氏寄稿文書「在京三弁護士会が運営するクレジット・サラ金法律相談センターなどの援助体制が有効に機能している」),在京三弁護士会の協力体制のおかげで本人申立が減少したという結論に結びつくということであろうが,経済的に追い詰められ破産を考えざるを得ない債務者が債務者本人の申立でなく,その費用負担が必要となる代理人を選任するという一定方向に向かうことから(裁判所がアドバイスして申立に必要な助言をするなどの方法もあるにもかかわらず),一定の組織的な運用が前提にあるといわざるを得ない。(甲1号証,甲9号証,甲10号証)
エ そもそも,多くの債務者が相談に訪れているにもかかわらず,本人申立率が0.39%にまで減少していることは代理人選任なしに手続がとれない,いわば代理人強制といってもよい状況があるという事実であり,これは裁判所としては憂慮すべき事実であるはずである。つまり,債務者本人が自分の手続を自分で完遂できる選択肢を裁判所が提示できない,いわば裁判所の重大な機能不全であるという事実に他ならないのである。この事実を認識することなしに本人申立率の減少をいずれの判事及び判事補も手放しで賞賛するという事実は、裁判所として「本人申立の減少は望ましい」という組織決定が存在すると示しているといわざるを得ない。
オ 実際申立の書類をもらうことすら困難である事実は原告を含め破産申立事件に関与した司法書士の多くが経験し,又はその依頼者より聴取することである。一方東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会編「クレジット・サラ金処理の手引き4訂版」(以下「手引き」という。)218頁には,「申立書式(申立書・付属書式)は,東京三会の各HP会員向けページに,ダウンロード用に掲載されています」との記載があり,債務者本人には手渡さない申立書式が在京三弁護士会に提供されている事実が確認でき,このことも東京地裁が代理人申立誘導を示す一例である。
カ また,窓口において手続きの説明を受けることもなしに弁護士会の法律相談センターに誘導される事実があることからも代理人申立誘導が組織的に行われていることは否定できない。
キ したがって,その組織決定には文書取扱に関する依命通達第4に従い司法行政文書が作成されていることになる。また,裁判所という国家機関が特定職能団体を介した申立以外をなくしていこうとする取扱いは司法行政文書の作成を要しないような軽微な事案ではない。
(2)開示請求文書Dに関して
ア 開示請求文書Dは,東京司法書士会が,東京地裁に対し「本人申立による自己破産手続について,これが代理人による申立の場合に比し,本人にとって過度な負担となる取扱いがなされていないかをご調査いただきたい。仮に,そのような取扱いの事実が認められる場合には,その取扱いを改善していただきたい。」,「司法書士の書類作成援助による破産申立事件について,破産手続の適正・円滑な実施に資するため,御庁破産部と当会との協議の場を設けていただきたい。」の2点につき平成17年2月1日付「要望書」にて,対応を求めた事実に対する,東京地裁での対応に関する司法行政文書の開示請求である。
イ ここで,裁判所提出書類の作成を業とすることができる司法書士が強制加入により組織する司法書士会の正式な運用改善の申し入れに対し,なんらの対応をとらなかったこということは通常考えられないし,たとえ対応は不要とする決定があったとすれば(この場合は,国民が有する債務者本人で申立てるという選択肢及び司法書士に書類作成を依頼して申立てるという選択肢を裁判所が軽視している組織決定の存在を裏付ける。),不要とする組織決定をする文書があるはずである。いずれにせよ,何らかの組織決定があることに疑いの余地はない。
ウ したがって,その組織決定には文書取扱に関する依命通達第4に従い司法行政文書が作成されていることになる。
(3)開示請求文書Eについて
ア 民事20部の窓口には,少額管財事件及び即日面接事件の利用は代理人申立事件に限ると記載した案内書を備え置いている。(甲11号証)
イ 少額管財事件及び即日面接事件を代理人申立に限ると明記している以上,その統一的運用に関して,組織決定のあることは間違いない。
ウ したがって,その組織決定には文書取扱に関する依命通達第4に従い司法行政文書が作成されていることになる。少額管財事件及び即日面接事件とも申立内容を問わず,代理人の有無を問うという,一片の合理性もない観点で,代理人の選任を望まない又は経済的理由から選任することのできない債務者の手続きの利用の排除を行う運用なので,司法行政文書の作成が不要な軽微な事案ではない。
(4)開示請求文書F及びGに関して
ア 民事20部が法律上有する管轄外からの破産申立事件についても,広く受理をして事件処理を行っていることは広く知られていることである。
イ 前掲の「手引き」29頁には東京地裁の管財事件の運用により裁量免責が認められる余地の広いことを述べた後「なお,東京都外に住所のある債務者の場合にも,(中略)東京地裁に破産申立をすることを検討して下さい」との記述があり,東京地裁20部と協力関係にある在京三弁護士会(東京弁護士会会報「LIBRA」2005年8月号において,民事第20部部長西謙二が「東京三弁護士会と協議しながら行っている東京地裁破産再生部の運用は」と発言している。)が代理人申立であれば,原則的に管轄を問わず受理をすることを共通の認識として有していることを明示している。(甲12号証)
ウ 民事20部が破産法の規定する管轄に違反した申立がなされていることを知らずに受け付けているとは考えられず,法律違反の申立に関して受理することに何らかの組織決定があるはずである。
エ したがって,その組織決定には文書取扱に関する依命通達第4に従い司法行政文書が作成されていることになる。また,法律に違反した運用を行うことが司法行政文書の作成が不要な軽微な事案に該当することはない。
(5)開示請求文書Hに関して
ア 民事20部の判事及び判事補自身が繰り返し,各雑誌で発言している事実であるから,運用の決定に在京三弁護士会との協議が大きな役割を果たしていたことは否定の余地もなく,このような会議の議事録は裁判所職員により作成され組織として用いる司法行政文書に該当する。
イ したがって,その組織決定には文書取扱に関する依命通達第4に従い司法行政文書が作成されていることになる。妥当性はさておき実際に行われる運用の決定に関わる会議は軽微な事案には該当しない。
2.以上検討したとおり,全ての文書が不存在ということは到底あり得ない主張であり,受け入れることはできない。
3.そもそも,意思決定をする場合に文書の作成が必要とする趣旨は,意思決定の過程が後日においても明らかにされ,情報公開の請求に対し説明責任を果たすことにあり,重要な意思決定につき文書を作成しないことはありえないのである。
4.仮に,敢えて当該司法行政文書の不存在を継続して主張をするとするならば,最高裁の各規程に反し,また現に行われている「運用」の決定に関し,組織として文書の作成すら行わないという到底考えることのできない状況が前提にあるので,当該司法行政文書の作成をしなかったという事実を立証することは被告の責任とすべきである。

第5 被告からの予想される主張に対する反論
1.被告より,東京高裁よりの甲号証に主張されるとおり,「裁判事務に関する文書」は存在しても開示の対象ではなく,「司法行政文書を精査した結果」存在しないから,不開示としたという反論が予想されるが,この反論の体をなさない反論に対しても念のために,反論しておく。
2.東京高裁の如き主張は,開示を免れる目的の下に,開示の対象となる要件をはずそうとするものであり,次の理由によりその主張は許されない。
3.まず,原告の開示請求に係る文書は,個々の事案に関わる「裁判事務に関する文書」ではなく,まさしく司法行政文書そのものであるからである。本件訴訟に関わる司法行政文書開示請求の他の開示請求により,原告は東京地裁より「第16回破産事件等担当書記官事務打ち合わせ協議問題」とする司法行政文書が開示されたが,この文書の内容は,破産事件等において弁護士をどのように関与させるかということであり,不存在として開示されなかった文書と分類を同じくするはずの文書である。この文書は「庶ろ−3」の司法行政文書の分類に従い保管されており,この文書が司法行政文書であるなら,開示請求に係る文書も司法行政文書である。そもそも,統一的な司法行政に関わる事案の決定に係る文書の開示しか求めていないので,新たに「裁判事務に関する文書」という概念を持ち出したとしても開示を拒む理由にはなりえないのである。
4.次に第3の1に掲げた各規程は,最高裁のホームページ上で記載されているとおり,行政機関に関する平成13年4月1日施行の行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)の「趣旨を踏まえ」,「国民に対するアカウンタビリティ(説明責任)を果たすため」規定されたものである。ここで,情報公開法の目的について確認しておくと,「保有する情報の一層の公開を図り(中略)諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに,国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資する」(同法第1条)ことであり,司法行政においてもこの趣旨を踏まえるというのであるから,@情報公開の促進を図ること,A@によって主権者である国民に対する説明責任を果たすこと,BAとともに国民の批判の下公正で民主的な「司法」の推進に資すること,がその趣旨である。個々の裁判に関しない,統一的に行われる「運用」の決定は,国民の批判のもとにさらされる必要があること,つまり開示の対象となるということは,東京地裁及び東京高裁を司法行政面で監督する最高裁自身が述べていることであり,この自身の意思表示に反する主張をここに至り行うことは許されない。
5.さらに,一度は開示文書の特定ができたという東京地裁担当者の発言,存在しないと主張する文書について,自らの規定に反し2ヶ月にわたり検討をした最高裁の対応を考慮すると,開示すべき司法行政文書の存在は否定できない。
6.よって,仮に「裁判事務に関する文書」である故に開示できないと主張したとしても,失当である。

第6 不法行為の成立
1.上記4及び5で検討したとおり,東京地裁,東京高裁及び最高裁は,存在する司法行政文書の開示を故意に頑なに拒絶している。
2.一方,司法行政文書開示に関して,東京地裁,東京高裁及び最高裁が司法行政文書を開示すべき法律上の明文の規定はないにしても,最高裁が,何人に対しても開示すると自らのホームページに掲げている以上,原告は開示請求により開示を受けることができると信じ,開示を受けることができる司法行政文書に関して開示の請求を行った。
3.なお,不開示とする例外もあるにしても,不開示の理由は「不存在」であり,何らかの不開示事由に該当したことを理由とするものではない。そもそも,最高裁の掲げる不開示事由には該当しないため,文書が存在するのであれば開示をすることが必要である。
4.上記の東京地裁,東京高裁及び最高裁の対応により,原告は第3の9記載の費用の合計金2,640円の損失を受けたばかりか,その精神的苦痛は金銭に見積もると金20万円をくだらず,合計金202,640円の損害を受けている。
5.したがって,被告は国家賠償法第1条第1項に基づき,原告に生じた損害を賠償すべき責任を負う。

第7 本件訴訟の意義
1,本件訴訟で求める損害賠償の請求は,民事20部の行う,代理人を選任しない破産申立に対する不当な制限の是正をもとめるために,当該運用の決定,維持の過程を明らかにすることを求めたことに端を発している。
2.そもそも,運用の妥当性に関わりなく,主権者である国民に説明することのできない運用は行ってはならないし,運用が真に正しいと信じるのであれば,国民にその正当性を支える根拠を示し,説得することが求められる。民事20部の判事,判事補が賞賛する本人申立事件が0.39%にまで減少した運用は,裁判所や法律専門家からの評価ではなく,国民の評価を受けなくては,真に評価を受けたとは言えない。
3.裁判所はあらゆる批判を許さない機関ではない。主権者である国民の人権を守ること,実現することにその役割があるはずであり,その行う活動は国民に対して説明されなければ,国民が必要とする裁判所ではない。
4.自らの効率性の追求に没頭し,説明責任を放棄するのであれば,裁判所の担う職責を放棄した行為であるといわねばならない。
5.したがって,本件訴訟による損害賠償の請求は,単に原告が被った損害の補填の意味のみではなく,ひいては,裁判所の公務執行の適正担保の回復も射程に含むものである。

第8 まとめ
1,よって,被告は原告に対し,国家賠償法第1条第1項の損害賠償請求権に基づき金202,640円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金の支払を求める。

証 拠 方 法

甲第1号証 「民事法情報」第242号(2006年11月10日)東京地方裁判所判事補松井洋寄稿文章の写し
甲第2号証 東京地方裁判所に対する「司法行政文書開示申出書」
甲第3号証の1 平成18年10月4日付「司法行政文書不開示通知書」
甲第3号証の2 平成18年10月4日付「事務連絡」
甲第4号証 東京高等裁判所に対する「司法行政文書の開示に関する苦情申立書」
甲第5号証 平成18年11月30日付「苦情の申出に係る司法行政文書不開示通知書」
甲第6号証 東京高等裁判所に対する「司法行政文書の開示に関する苦情の申出書」
甲第7号証 最高裁判所に対する「司法行政文書の開示に関する苦情の申出書」
甲第8号証 平成19年3月26日付「苦情の申出に係る司法行政文書不開示通知書」
甲第9号証 「民事法情報」第218号(2004年11月10日)東京地方裁判所判事補鈴木義和寄稿文章の写し
甲第10号証 「金融法務事情」第1755号(2005年11月25日)東京地方裁判所民事第20部判事中山孝雄寄稿文章の写し
甲第11号証の1 「即日面接進行要領」
甲第11号証の2 「個人管財手続の進行要領(管財G係)」
甲第12号証 「LIBRA」2005年8月号の写し

附 属 書 類
1.訴状副本         1通
2.甲号証写し       各1通
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